芸術とは

芸術とは何か。


東大教授であり美術家の佐々木健一氏の『美学辞典』東京大学出版会からの引用文が目にとまりました。

「人間が自らの生と生の環境とを改善するために自然を改造する力を、広い意味でのart(仕業)という。そのなかでも特に芸術とは、予め定まった特定の目的に鎖(とざ)されることなく、技術的な困難を克服し常に現状を超え出てゆこうとする精神の冒険性に根ざし、美的コミュニケーションを志向性によってする活動である。」これについては、同著者の『講座美学2 美学の主題』により詳しく書かれています。

「特定の目的に鎖されていない作品は、作者にとっても鑑賞者にとっても、緊張の結晶であり、泉のように多様な意味を湧き出させるものとして、それはオリジナルな世界である。このオリジナルな世界は作者の個性を刻印した『作者の世界』だが、作者の意図を超えた可能性をはらんでいるという意味では、作者一人のものではなく、自律的な世界である。」

時代や場所によって変動する芸術の概念のなかにあって、芸術を芸術足らしめるものは何か。最初の引用文には、それは可能な限りの高みを目ざす芸術家の冒険の精神によって生み出され、最大限の意味充実を求める鑑賞者の本性的な志向性によって現実化される、とあります。


「作者の意図を超えた可能性」「技術的な困難を克服し、常に現状を超え出てゆこうとする精神の冒険性」、なんだかときめきます。求めているものの方向性は間違っていないようです。