『透明な混沌-静寂と躍動-』

この作品は6月のAU展で初めて発表したもので、その直後の個展でも展示し、その空間演出に貢献してくれました。

以前の投稿でも書いたかもしれませんが、作品タイトル『透明な混沌~静寂と躍動~』は、岡本太郎氏著『宇宙を翔ぶ目』から頂いたものです。

(以下本文から抜粋)


「宇宙というのは、ただ清らかで何もない空間の広がりではなくて、無限の運命がびっしりとつまった、透明な混沌ではないか。組紐紋などはそれを造形的に、疑いようがないほど確かに表現している。あらゆるものを組紐紋で埋めつくすのは運命に挑みかける呪術であり、宇宙観でもある。」(『宇宙を翔ぶ眼』8-16より)

上の文は岡本氏が縄文紋様について書いたものですが、まず「透明な混沌」という言い回しが私の好みであったのと、また自分の描いている円を基調とした幾何学模様の羅列とも重なってやけに腑に落ち、今回はこれをもとに作品を作ろうと思った次第です。

直径40cmの3つの円の変化、静寂からの躍動、カオスを経た闇から光への変遷、しかしまだその奥には微かに蠢いている何かを感じるし、また闇を静寂ないし無とするのなら、やはりそれは決して何もないということではなく、そこには無限の深みのようなものがあるんだ、というようなことを表現できたらと。

今までは、自己対峙を通して闇と光、無とは何かを考えてきましたが、今回はそれにとどまらず無限の宇宙(それが物理的な話なのか精神性の話なのか、はたまた相互に関連し合っているのか、そもそも物理って何なの、みたいなことはいまだ模索中で今後の課題でもありますが)を意識できたのは楽しい試みでした。