目と窓の関係性から多眼的認知を考える

新しい作品の制作にあたり、テーマも含めて色々考えていると、そう言えば2021年のThe ArtcomprexCenter of Tokyo『語る抽象画展』に出品した作品について記録していなかったと思い、今さらながらブログに書いておこくことにしました。

この作品は『two windows』というタイトルで、角度を変えてみると二つあった四角が消えるというもので、実際にこの作品を正面から見ると二つある四角が、斜め横からみると一つ消えて見えます。「当然そうだと思っていることでも、視点を変えるとそうではないことがある」ということを主題にし、この四角を窓に見立ててタイトルを『Two windows』としました。タイトルを窓としたのには以下の理由からです。


●日本語では、「窓」を目に喩えていることがあり、居住空間を身体になぞらえていることから、認知的に言えば、人間の身体を基盤として外界を捉えている。さらには、窓の開閉機能、大切なものを守る内部の象徴、外界との接点、という機能的側面においても、「目」と密接に関連させていることが分かる。 (連載アラカルト 植田康成『vol.1日本語における窓』より抜粋)


また、視点を変えると見えなかったものが見えたり、見えていたものが見えたりということについて、真実と事実の違いいう観点から考えてみました。


●「事実」と「真実」の違い

「事実」・・・本当の事柄。実際に起きた事柄 

「真実」・・・本当のこと。嘘偽りではないこと

「事実」は「客観的な事柄」、「真実」は「主観的な事柄」を意味します。 例えば、何か事件が起きたとします。 「AがBを殺した」というのは「事実」です。「Aは暴力を振るってくるBを避けようとしたところ、Bが足を滑らせて頭を打ち死に至った」は「真実」です。 「AがBを殺した」と聞くと、「AがBに殺意があったため起きた」と認識してしまいがちです。しかし、殺害には、別の理由があったかもしれません。 このように、「事実」は「誰から見ても変わらない、実際に起きた出来事」を、「真実」は「事実に対して、人それぞれの考えや解釈」を表します。 「事実」は常に一つで、「真実」は複数存在します。



この作品を見ると、自分の視野や思考が狭くなっていないか、事実を見る目をきちんと持てているのかという戒めになる気がします。