書と作品

この写真の作品は、3月開催の「JAPAN SHODO SHOW2024」に出品した作品で、聖福寺の仙厓が描いた○△□の図形のみで構成された禅画を書作品として立体で表現したもの(○△は、立体表面に丸、三角を形取ったものを幾何学模様でうめつくし表現し、□は立方体の面で表現している)です。

 仙厓の描いた禅画の解釈には諸説ありますが、「○」が象徴する満月のように円満な悟道の境地に至る修行の階梯を図示したとも、この世の存在全てを3つの図形に代表させ大宇宙を小画面に凝縮させたとも言われているそうです。

以下は、その展覧会において作品制作の目的について述べたものです。


「近年、電子の分野においても単純な図形を組み合わせてできる幾何学模様に情報を組み込んで伝達する方法の提案がされていますが、幾何学模様は古代から文字や記号として情報伝達のために使われており、私は書家として敢えて文字ではなく情報伝達の媒介としてこの丸、三角、四角、クロスからなる幾何学模様(玲翠模様)を使用し作品を制作しています。それは、人各々の経験の積み重ねによる想像力や洞察力、個々の感性を軸として既成概念にとらわれることなく鑑賞者の感情に直接働きかけ、各々が各々の受け止めをして欲しいと考えているからです。そのような私の書制作は、自己対峙から始まり、この単純な文様を無心に規則性をもって繰り返し書き続けることにより無我の境地に達した時、静寂の中で感じる微かな光を作品に投影し、鑑賞する人に伝達して感じて頂くことを目的としています。」